願いを叶えるための技術 その8【人間的成長なくして夢の実現はない】

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1. 人間的成長なくして夢の実現はない

子曰わく、政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰の其の所に居て、衆星の之に共うが如し。
「論語」為政第二により

 論語にあるこの言葉は、政治を徳の心を持って行えば、たとえば北極星がいつも動かずにいながらも、他の星々が北極星を中心にまわるように、慕われるものだ、という意味です。
 政治と聞けば、何か縁遠いように聞こえますが、政治を簡潔に言えば、互いの利害を調整し集団をまとめることであり、職場やコミュニティ、ひいては友人関係など身近な所でも、政治的思考が働いています。しかしながら、利害関係だけの繋がりでは、損得勘定や人の好き嫌いなどにより、まとまりのない集団が形成され結局離散するのは自明です。
 人間は感情を持つ生き物であり、怒りや憎しみに翻弄される反面、愛情を感じれば、その人に好意を持ち、困ったことがあれば手を差しのべたいと思うもの。つまり、人間関係の結び目にあるものは利害打算ではなく情であり、優しさと厳しさをもって愛情を体現できる人を徳があると言うのです。
 更に、高い徳を持っている人は、情をかけるべき相手とそのタイミングを知るだけではなく、情に流されることなく大局的な判断ができます。常に思慮深く、自らの振る舞いにも最善を尽くす姿は、まるで磁力のように人を惹きつけてやみません。
 夢や願望に向かって邁進するにしても、そこに人格が伴わなければ、支援者は現れませんし、たとえ願いが叶ったとしても、孤独であれば成功とは言えません。
 徳を磨き、人格形成に努めれば、応援してくれる人は増え、願望を実現するための環境が自然に整ってきます。つまり、人間的成長なくして夢の実現はないのです。

2. 高徳者の共通点

 なぜ私が、徳のある人物について語れるのかというと、私自身が高徳の持ち主と幸運にも出会ったことによって心が救われ、人生が変わるきっかけとなったからです。
 空手の師匠、セミナーの講師、職場の先輩…これら偶然にも巡り会えた人生の教師達は、今でも私の手本となってます。
 では、彼ら高徳者が持つ、ある共通点をご紹介しましょう。

・謙虚である

 誰しも「認められたい」「特別な存在になりたい」そんな願望があります。
 承認欲求を満たすための自己表現は、自ら存在価値を確認できる手段であり、目的達成の原動力になる一方、夢中になり過ぎるあまり、周囲が見えなくなる可能性が大いにあります。
 しかしながら、盲目的になり周囲への配慮を欠いた時、或いは傲慢になった時、絶妙なタイミングでそれを注意してくれる人が現れるものです。
 実はこの時が、自分の誤りに気づき、人として成長できる機会であるにもかかわらず、折角の貴重なアドバイスに腹を立て、耳を傾けない人が何と多いことでしょう。まさに徳を磨く絶好の機会をみすみす手放しているとしか言いようがありません。
 耳の痛い指摘を受けた時、自信を失い自己嫌悪に陥ることもありますが、己の至らなさを素直に認める謙虚さと、この苦い経験をこれからどう活かしていくのか、しつかり自分と向き合う勇気があれば、必ず事は良い方向へと向かいます。そして人生が好転した時、周囲の人達へ感謝の気持ちが自然に溢れ、モチベーションが高まり、更なる成果に繋がっていくのです。

・ポジティブである

誰しも失敗し、思い通りならないことがあります。でも、そんな時、こんなことを思っていませんか?
「○○さんのせいだ」「こんな環境だからだ」
 このような思考は、失敗やトラブルを誰かの責任にして、終わりにしようとしている、或いは、なかった事にしようとしているだけのことで、責任逃れであり、嫌悪感しか残りません。
 逆に「○○さんのおかげで、今回失敗した原因がわかったよ」「この機会に環境を変えていこう」というように、失敗によって教訓を得たことに感謝することで、前向きな思考となります。アクシデントに見舞われても人を攻めず、プラスへと転じていく姿は皆から評価され、きっとチームのリーダーへと押し上げられるでしょう。
 また、何事もポジティブな思考ができる人は、日頃から人の悪口を絶対に言いません。なぜならば、他人の短所ばかり注目し言葉に発していると、ネガティブな思考が習慣となり、人のあら探しが、やがて自分へのコンプレックスや失敗にまで目を向けることになってしまうからです。
 ポジティブでありつづけるためには、ネガティブを排除する習慣をつけることが大切です。たとえば就寝前に嫌なことを思い出した場合などは、楽しかったことや嬉しかった記憶を引っ張り出し、ネガティブな思考に上書きしましょう。何も思いつかない場合は、両親・配偶者・子供・友人など身近な人をイメージしながら、布団の中で「ありがとう」を呟くだけで構いません。自らの声で発した「ありがとう」が、自分自身への「ありがとう」となり、意識に擦り込まれ、ポジティブな思考へと繋がっていきます。

・配慮できる

 様子がおかしい仲間がいれば一声かける、何かいただき物があれば皆で分ける、約束事は守るなど、言葉と行動で誠実にコミュニケーションをとることが大切です。
 とはいえ、事実や正論を伝えることが、必ずしも良いことばかりとは限りません。相手の事情や、お互いの関係性を考慮した時など、全てを語らず、あえて核心的なことには触れない方が良い場面もあります。その他では、電車でお年寄りを見かけたら席を譲る、ホテルのチェックアウト時は部屋を片付けるなども、同様に相手のへの思いやりを示す行為です。
 このように、相手の立場になって考え、行動することを配慮と呼び、双方向の意思を伝達するコミュニケーションとは若干、意味合いが違ってきます。
 時に配慮は、自分の貴重な時間を誰かのために割くことがありますが、この非効率も厭わない優しさこそが、まさに情であり、その情に感動した人達と強い信頼関係で結ばれやすくなります。
 ただ、気をつけないといけないのは、配慮はあくまで、その場その場に応じた思いやりであって、ボランティアのような全面的な奉仕ではありません。度が過ぎる気配りは配慮の域を超え、自己犠牲となってしまうのでやめておきましょう。

・完璧主義でない

 100%完璧でないと心配で仕方ない、納得がいかない、気持ち悪い、そんな人をたまに見かけます。もちろん、世の中には小さなミスも許されない仕事がありますし、特に安全に関わる事や、人命に直結するような分野では、常にパーフェクトが求められます。ただ、そうではない場合であれば、100点満点を目指しつつも80点以上できれば良い時もあるのではないでしょうか。
 たとえば次の三つに当てはまるものです。

  • 出来栄えは並でも、その機能に問題がなければよい
  • 丁寧にし過ぎることで、時間切れになるかもしれない
  • そもそも、パーフェクトを求められていない

 このように、物事によっては必ずしも完璧でなくてもよいことがあります。
 完璧主義の人は、とかく力を入れなくてもよい所まで一生懸命となり、周囲のペースを乱してしまいがちです。「その仕事って、そこまでする必要あるの?」って思わず言ってしまいそうになった方もいるのではないでしょうか。
 これは完璧主義を否定しているわけではありません。時と場合によると言った意味です。
 大半の物事は、要領を掴み、短時間で効率よくやる方が、いいに決まっています。
 必ずしも「完璧=最良」ではないのです。

 ・過去にすがらない、引きずらない

 過去の栄光は、自ら振り返って懐かしみ、次のステップへ進むためのモチベーションにするものです。誰かに認めて欲しいからといって、「俺も昔は凄かったんだ」などとアピールしているようでは、徳がある人物とは言えません。武勇伝もその場を和ませる程度のものであればいいですが、自慢話ばかりだと場が白けてしまい、品格まで疑われます。過去の栄光を語るときは、相手の感情や場の空気に鈍感にならないよう注意しましょう。
 一方で、辛く悲しい出来事がトラウマとなり、何かのきっかけに、その過去を思い出し苦悩している人も大井と思います。深い心の傷はなかなか消えることはなく、忘れることなど到底できないでしょう。
 ただ、忘れることはできなくても、次の3つことを習慣付ければ、辛い過去を思い出す回数を減らすことはできます。

  • 目の前の事に打ち込む
  • できるだけ愉快に生きる
  • 小さなことに感謝する

 これら3つは、「今」を充実させるための行動習慣です。
 今、この瞬間にベストを尽くし、楽しく前向きに生きる。そして、毎日ご飯が食べられることや、部屋の灯りがつくこと、また、蛇口をひねれば水が出てくることなど、当たり前の生活ができることに感謝する。
 「充実した今」の積み重ねが、心の傷を少しずつ埋めていき、いつかは過去の悪夢に苛まれる日々から脱却できるはずです。

3.徳を磨く上で注意すべき点

 最後に、徳を磨く上で一つだけ注意すべき点をお伝えします。
 謙虚な気持ちで常に学び徳を育てていけば、人間関係が豊かになり、それが貴重な財産となることは間違いありません。ただし、自分の夢や憧れを妨げる人との関係まで無理して保つ必要はありません。なぜならば、夢を実現するためには、誰と会い、何を話すのか、どんな行動をするか、が最も重要にだからです。
 もし、あなたの近くに、あなたの夢や野心に理解を示さない人がいるならば、その人からは離れたほうが得策です。そして、夢に向かって邁進すれば徐々に人生の軌道が変わり、目の前から道を妨げていた人達が消えていきます。
 新たに切り開いた環境で人格を磨くことにより、あなたの魅力に惹きつけられた人達が、きっと夢実現の後押ししてくれることでしょう。

【まとめ】

  • 人間的成長なくして夢の実現はあり得ない
  • 徳を磨こう(謙虚である/ポジティブである/配慮できる/完璧主義でない/過去にすがらない・引きずらない)
  • 新たな環境を切り開き、徳を磨くことで、支援者が現れる
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